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2007年5月19日 (土)

それはアプローチが違うモード

 立てこもり事件がようやく解決。本来なら将来を約束されていた筈の若者が、ありえない程の不遇(としておきます)で命を落とすという残念な結果となってしまいました。

 状況の印象は後回しにして、政府の反応に対してかなり違和感を感じたのでその話から。銃が拡散していて歯止めがかからない。そこで「罰則を強化して対応」と案を出している議員がいることに、あまりに安直で呆れました。罰則で銃を持つなり使うなりをやめるような人はそもそも銃は持たないでしょう。罰則なんて気にしない、法なんて無視の連中が今回のような事件を起こすのであって。

 日本も諸外国並みに「警察官の対武装用装備を整えるべき」とかねがね思っていましたが、今回の件でその思いを強くしました。装備がしっかりしていれば、人質解放から5分もせず解決していた事件な筈です。この手の論議が出ると「日本は銃社会じゃないからそこまで必要ない」という意見が必ず出ますが、欧州の諸国も銃社会ではないわけですが?G7なりG8に出てくる国で最も「警察の」装備が貧弱なのは日本です。なぜ国外で鉄砲撃つ(別に国民の命は救わない)論議は好んでするくせに、国内で鉄砲撃つ(現状犯罪者より貧弱な装備のせいで警察官の皆さんはスケープゴート状態、流れ弾で不幸に見舞われる国民も最近は少なくない)論議を避けるのか。理解に苦しみます。自分たちが不当逮捕される可能性を疑っているとでも?

 今回亡くなった若者はSATという対テロ等の特殊部隊の精鋭、ということでした。私の主観ではああいうセクションは体力・体格でなく「適性」で選抜すべきで、増して警察学校の成績で選ぶべきではないと思ったし、配属1年半程度の言ってみれば素人をそんなフロントラインにいきなり出したのは明らかに指揮担当のミスだと思います。銃と向き合うのであれば諸外国の同様の組織との演習などを少なくとも3年は経てからでないと使い物にならないという素人印象がありますが。SATが過去に出動したメジャーな事件で役に立った事例はほぼなく(せいぜい函館のハイジャックの件)、経験不足と装備の不足両面があるように思います。

 例えば米国の警察にはSWATというセクションがあり、クリミナルサスペンスの読みすぎか日本では「殺戮部隊」とか馬鹿なこと言い出す政治家がいる始末ですが;彼らは十分な装備と綿密な計画を持って、銃を持った犯罪者の情報をもとに「警官・犯罪者両方に死者を出さず状況制圧を迅速に行う」ことを主任務とします。犯罪者を処分することにGOサインが出ているなら、最も安全かつ最も確実な方法でそれを済ませてしまいますが、通常は投降させることを狙って行動します。それを成し得ているのは十分な装備と、実例に基づいた十分な訓練、そして経験に基づいた的確な指揮です。

 投降を促がす上で最も簡単なのは、装備で相手を圧倒してしまうことです。抑止力的意味合いで武装強化をしておくのは、何も国際間のパワーバランスに限ったことではありません。そこに争いがあるのなら、個人間でも成立する状況です。ただ、それだけだと「ただの豆鉄砲で怪我人出しただけの犯人を軽機関銃でミンチ」とかやりかねないので、現場の人間の十分な精神的熟練まで含めた対状況対処能力と、現場のすぐ近くで即応で指示を出せる優秀な指揮系統、そしてこれが一番大事かと思いますが、有事にその現場の指揮系統に判断を全て移譲できる警察内の命令系統だと思います。上で責任逃れの算段をしている時間が長いせいでいつもいつも現場の人間がワリ食ってるように見えるのですが。

 SATもボディアーマーとMP5(軽機関銃)、そしてセミオートタイプの拳銃(一般の警官が使うリボルバータイプより強力なもの)を装備するに至ったようですが、報道で「ボディアーマーを装着したまま高い機動力を云々」言われてるのは「仕事ナメてんのか、それで動けないような奴はそもそも使うな」で終わりですし(消防士の皆さんはそれよりずっと重い装備で危険な状況下迅速に行動しているわけですが?)、拳銃の上がいきなり軽機関銃というのも「警官が発砲しただけですぐネガティブな反応が飛んでくるこの国」にあっては「間が存在しない不適切な装備」としか思えません。

 今回の場合は、音響閃光系のスタングレネード(爆発でなく大きな音か強い光、もしくは両方を放つ手榴弾)とレスリーサル系ランチャーの複数装備で制圧はスムーズに行えた筈です。犯人わざわざ身を乗り出したりしていたわけですし。拳銃には拳銃というのは直球すぎでは。レスリーサルランチャーというのは、日本で先日規制が行われたエアガンの延長にある警察/警備会社向け装備で、その名の通り致死性が少ない、もしくは存在しない強力な空気銃です。弾丸によってはペイントだけですが、一応インパクト系、催涙ガスに似た化学成分系の弾丸も撃てるものです。有名なのはこの機種※。例えば3人がかりで制圧に当たったとして、装弾数15全てインパクト弾で閃光弾の直後に撃ち込めば、犯人は重傷は負うでしょうが死にはしないでしょう。ちなみに有効射程50m、日本の都市圏においては誤射や流れ弾の可能性まで含めて火薬系の銃器より有効かと思います。むしろ日本で起きている犯罪の状況を見るに、拳銃よりこちらが活躍しそうな局面は多いです。

※現在サイトには対応弾としてグリコールを使うインパクト弾含め主に薬品系が記載されていますが、ゴムスラッグ弾と鉛スラッグ弾も当初存在しました。要請があれば再生産されるものと思われます。鉛スラッグだと「レス」リーサルでなくなるため掲載していないと推測します。

 いい機会なので、SATは組織構造と装備類の両面から見直しを行うべきではないかと思います。積極的に海外に研修に出すべきだと思うし(常時半数は研修に出ているくらいでちょうどいいかと。となると今の倍の人数が必要と単純計算できますね)、SATに限らずテロ対処能力は持っているべきだと思われるので、この際警察官全体のスキルの底上げをしておくべきではないかと思うのですが。現場で活動していたSATと思しき隊員の映像が随分TVでも流れましたが、民間人でもあれよりいいボディアーマー買える始末ですし(苦笑)、拳銃犯罪の現場に出くわすのは最初に一般警官であることを考えると、SATの装備をして死者を出した現状、「それじゃあ普通のおまわりさんはどうなっちゃうの?」状態です。命令受けて現場へ→装備不足で無駄に殉職って、それ明らかに命令出した人間、ひいては装備を決定してる国の責任だと思うんですが。これは今回の件に限らず、銃器犯罪が起きるたび思うことですが。

 とにかく、なんで体をしきりに露出させてる犯人にあれほど時間かけたのか、本当に理解に苦しみました。増して死者が、しかも精鋭と言われている部隊から出るなど論外です。彼を殺したのは「国家の体質」ではないのか、と思うほど。

 最後に、非常に言いにくいですが今回の状況を報道の限られた状況から考えると。亡くなった若者が撃たれたのは鎖骨で死因は失血死だそうですが、鎖骨に血管が通ってるわけじゃないので銃弾で砕けた骨ないし銃弾自体の破砕片がその奥の動脈を切ったと考えられます。(続報で、心臓まで抜けたとの情報がありました)先に撃たれたおまわりさんが首の右側撃たれてあの時間放置されて生き残ったのを考えると本当に不幸だと言わざるを得ません。しかし。
 犯人から7mという至近距離で特殊部隊の隊員が被弾という状況もまた理解し難いです。ボディアーマーだけでなく、ポリカーボネート等の盾も持っていた筈で、余所見でもしない限り直接被弾の可能性は薄い筈なのですが。何のためにその場所にいたのか本人が理解できないほど動転していたのでは?普通に考えて「たった1つの銃口」に対し常に注意を払うのが当たり前な筈で、それを怠ったというのは…これ以上は死人に鞭を打つようですし、ご遺族の方にも気の毒なのでやめておきます。

 ただ、今回の件、重ねて言いますが、くだんの若者を死に追いやったのは警察の内部構造、ひいては政府の現況に対する認知不足である、ということだけは断言しておきます。優れた人格者には相応しいポストがあった筈です。彼の死が無駄にならないことを切に望みます。SATがこれ以上ナメられては、可能性として指摘されているテロの数々に日本という国は対処できません。

・検証を含めて適宜記事の修正を行いました(記事公開後)
 また、今回の件はSATという組織の秘匿主義(もともと対テロ部隊なため、一般的な拳銃犯罪への対処というレベルの組織ではない)故に地元県警とまったく足並みが揃わなかったことが失敗の原因であると県警のコメントで出ています。
 ようするに「SATより下で一般警官より上の存在」が必要、という結論でしょう。
 SATはレスリーサルランチャーは持っていないものの、スタングレネードは所持していたそうです。方々で言われていますが、やはり頭がついてこないことには。

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コメント

 今日の新聞に、殉職した隊員の「撃たれる1分前」に
撮影されたという写真がありました。

 写真には複数でMP5を正面(警官が倒れている方向)
に構えているSAT隊がいて、殉職した隊員は一番端。
いずれも両手で構えている為だれも盾は持ってません。

 報道が正しいなら、撃った犯人はこの時正面にはおら
ず、建物の一番道路側(殉職した隊員の斜め前)植木に
半分隠れたような窓から撃ったそうで、撃たれた隊員か
らすると全く予想外だったのでしょう。

 「撃たれる1分前」の写真はリンク先に載せました。
明日20日には消しますが。 建物の写真はニュースで
見つかると思います。


 それにしても、ここの処どうしてそこまで納得
のいかない長時間の「説得」にこだわるのかと
苛立ちすら感じます。

 突入より説得で解決した方が有能な指揮官だ
とでも考えているのでなければ良いのですが。

投稿: がこ | 2007年5月19日 (土) 23時57分

すぱっと言い切っちゃいますが現場の指揮官バカですね。何で短銃1丁の犯人相手にMP5でツーマンセル組んでるの?ネゴシエートでやるって方針決まってたんならセミオートのハンドガン+盾で十分でしょ。あの時点で人質解放されてないわけだから、もしMP5発砲なんかしたら確実に誤射ですがな。(シングルで撃つならグロックで構わんわけで。距離的にはCQBでしょ?)
もう何というか、「組織構築以前の問題、マインドセットからやり直せ」と言いたいです。

おもちゃ貰った子供じゃないんだからさ。すぐMP5持ち出すなっつーの。米国の本職だってこの状況じゃSMGなんか持ち出さないでしょ。(SMGを撃つ状況=射殺なので、それならハンドガンのヘッドショットで構わない)何をするためにあの場所に向かったのかすら隊員が理解してないように見える装備だよなぁ。怪我人の確保支援に両手塞いでどーすんの?

もー本気で頭痛い。今回の現場の指揮担当、実名公開の上更迭を強く希望しますが。

交渉で済ますならSATなんか呼ぶなっつーに。
素人の拳銃1丁に死者出す対テロ部隊なんて聞いたことないよ。相手が同等の武装だったらと思うと眩暈が。

人質いなくなってから解決までも長すぎだし、この手の犯罪への対応、明らかにぬるすぎですね。1秒事態が長引けば引き金を引かれる可能性がその分増加するのだという意識、ないんだろうか。

犯罪者の人権にこだわりすぎ。関係者全員死んでるってんなら犯人から引き出す情報もあるだろうけど、皆生きてるわけだし。あぁもう;このグダグダっぷりは一体何すか。今まで見た警察の仕事の中では最低の部類ですな。つくづく新人さんが浮かばれない。

投稿: ぬまにゃん | 2007年5月20日 (日) 00時34分

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