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2007年3月31日 (土)

不毛な空中戦モード

 タイトーのフライトシム「OverG」を最近何故かずっとやっていますが(たまたまやってる最中にエースコンバット6が発表になったので、フライトシムに慣れてフライトシューティングで楽をしようという魂胆がw)、シナリオが進んでついに選択可能機にF-22ラプターが加わりました。早速使ってみて、今まで空戦ができるステルス機がなかったので随分楽をさせてもらっていますが、思ってたのとちょっと違うなと思いつつ、米軍内で行われた模擬戦の話になるほどと頷きました。

 ラプターは高い機動力とステルス性、そして優れたアビオニクスを持つ機体です。AWACSの情報に頼らなくても相当アウトレンジから敵を捕捉します。ですが…ぶっちゃけた話、よく言われてるファーストキルってのは「ない」ですね。使うミサイルは中距離用のもので、同じミサイル(AIM-120C)はスーパーホーネットでも使えます。従来の中距離ミサイルの最新型をウエポンベイに収めるため小型化したミサイルとサイドワインダーの最新型(9X)を使いますが、アウトレンジで捕捉した敵に当たる武器が1つもないです。もちろん翼に下げれば長距離や対レーダーの対地ミサイルあたりは使えるでしょうが、フェニックスCあたりが使えるようになるわけではありません。で、ミサイルはミサイルの性能で当たるものなので、索敵と接近をその圧倒的な機動力とステルス性能で行うとしても、現状ミサイルを当てるプロセスやレンジは既存機と同じですし、地上戦に至ってはウエポンベイを使う場合は誘導爆弾なので、対地ミサイルほど使い勝手はよくないです。こと対地の場合ファーストキルをやるならSu-27の方がまだマシという感じ。

 ただし、このもどかしい機体には絶対的なアドバンテージがあります。演習でアグレッサーを務めたパイロットたちが口々に「見えない」と言っていましたが、ラプターはとにかく敵のミサイルロックを外す能力、また、ミサイルを回避する能力に長けています。ただでさえステルスで当たらないところ、至近距離で撃たれても(それこそ9Xサイドワインダーを)A/Bをかけて旋回で振り切ってしまいます。とんでもない推力とそれに耐える舵を備えている、というわけです。落ちにくいです。低速域でも扱いやすく感じました。武器燃料補給のために離着陸がありますが(シムですから)、やばいとすぐ機体が教えてくれるので、適切なアプローチに修正しやすいです。この広い速度域を瞬時にカバーする機動力は主にサイドワインダーが使われる短距離のレンジで真価を発揮します。ステルス&スーパークルーズで懐に飛び込んで、急減速から高G旋回をかけて無理矢理後方についてサイドワインダー1発。これがラプターの一番楽な戦い方だと思いました。相手はついてこれませんし、まっすぐ向かってくるこちらがレーダーに映らない上、運良く映ってもミサイルがこちらをロストしますから。ちなみに20mm機関砲は上手い人が使えば気休めになりそうですが、あまりに高い機動力に対し補正がないので扱いにくく、弾数は少ないです。

 さて、既存機体に対してはそんなわけで有利すぎるくらい有利なラプターですが、同様の条件の機体が相手だとどうでしょう?ステルス装備で推力があり高機動。作中ではライトニングIIBやブラックウィドウIIとの空戦がありますが、ラプターほどでないにせよばんばん避けてきます。真面目に後ろについてセオリーどおりに短距離AAMを当てる、ないし機関砲で落とすしかない感じです。こちらと同様にミサイルは避けますが。で、幸いにしてまだラプター同士の空戦をしていませんが、実際にそうなると恐らく相当不毛です。パイロットのスキルが同程度なら千日手かもしれません。

 わかりやすく説明するなら、最新を謳うアビオニクスは古典的なレーダー程度しか用を足さなくなり、当てる武器は近距離武装に限られてしまうわけで、それってようするに「第二次大戦後10年くらいまでの空戦を高い速度域で無駄にハイテクと燃料とマンパワー使ってやる」ということになっちゃうんではないかと。

 まともに運用するのなら、まず自慢のフェイズドアレイレーダーのレンジと同等の射程を持つAAMを開発しないと意味ないっぽいですし、現状の誘導爆弾のみ(パイロンになら対レーダーミサイルは積めるようですが、ステルス性はなくなる)という対地性能は物足りないかもしれません。中距離AAMをびっくりするほど積めてあの機動力というのは既存の非ステルス機には脅威ですが、相手がステルスだと以下略です。中距離ミサイルも性能向上しないといけないかもしれません。ステルスで近づいて撃てばファーストキルという理屈は、ミサイルが発射された時点でミサイル自体が探知される現状、言われてるほど意味はないと思われます。ただ、思いのほかレンジが近くもどかしい思いをさせられるAIM-120Cは、レンジに入ってからの「奥行き」があるので(これがないと短距離AAMとの射程に隙間ができてしまい、結果的にその間に入られた時に撃たれてしまう)そこは美点です。いっそ、120Cをベースにロシア空軍にあるような2段誘導型長距離ミサイルでも開発してみてはどうかと思うほどです。9Xサイドワインダーを確実に当てる距離に安全に踏み込めるのは本当に便利なので、現状左右1のサイドワインダー用ウエポンベイを左右2に拡張してはどうかとも思いました。

 いずれにしろ、ステルス機を持つのが米軍だけという現状においては一人相撲ですが、とうに貧乏でなくなっているロシアが秘密裏に真面目にステルス機を作っていたら?という事を考えると「千日手のジレンマ」が再現される可能性があるわけですし、うっかり某国(世界的にはJのアルファベットで始まるとされる極東の国)が「既存ステルス技術を全く無視して当たる新しいアビオニクス系統を使ったAAM」なんかを間違って作った日にゃあ、そりゃもう誘導技術において世界トップレベルの防衛省の技本ですから射程を選ばず気が狂ったような挙動でさっくりラプターに直撃するミサイルになる可能性もあります。弾道弾迎撃のスピンオフとか、言い訳はいくらでもできそうですし(笑)。そうなると世界中の産業スパイの皆さんがJ国にやってくるでしょうが、J国治安がいいわりに諜報対策ザルなので(内通者だらけという説もありますし)そうなったらラプターは「高額なミサイルキャリア」に成り下がる可能性もあります。

 便利なものほど対策されるのは早いと思われます。現状のラプターの神話も、そう長続きしないかもしれません。しかし、それでも米軍は構わないのでしょう。彼らは空軍力の無人化に固執していますから、そのうち航空兵力はメンテナンス要員だけになるかもしれませんし。歩兵の機械化(サイボーグ技術の軍事運用という倫理観はどこへ?という発表も米国は既に行っています)を軸に、無人+精鋭戦隊による戦争をするのが彼らの将来のビジョンなのでしょう。まあそれは置いておくとしても、かつてミサイルが流行り出した頃、ベトナムでミサイルキャリアたるF-4がまともな空中戦をするMiG-21にボコられた、という歴史がある以上、いつ「対ステルス」が普通の技術になって空戦のシーンがリセットされても全く不思議ではなく、その場合ステルスに頼ったコンセプトの機体は見直しを迫られるだろうなぁとは強く思います。幸いラプターには卓越した機動性がありますから、すぐさまお払い箱とはならないでしょうけどね(ブラックウィドウIIが採用されてたら悲惨なことになっていたでしょう)。かえってまともな空戦ができるようになって再評価されるかもしれません(笑)。キャンセルされたコマンチや採用されたライトニングIIなど第二世代?のステルス機がいずれも「+αの性能」を持つのは、案外この技術が長続きしないことを米軍がよく理解しているからではないか、と穿ってしまいます。公表していないだけで自軍にはもうあるのかもですよ?対ステルス機用ミサイルとか。

 にしても、ラプターは。

 美しくないorz。
(なんてのかな、ものすごくカッコ悪いけど速いスポーツカーを彷彿させる存在感です;)

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コメント

こんなことで感心してたら怒られそうだけど、相変わらずぬまさんの話はすごい。とゆうか長い。このパワーはどこから?って感じです。で、今回の話しでもっとも興味を惹いたのは「F-4がミグ21にボコられた」の部分。自分は兵器好きですが主に見た目がメインでその運用話、戦術・戦略・戦史的な話は知らず。なのでミグ21もその見た目から「真っ直ぐしか飛べないやられメカ」だと思ってました。コミケで買ったものの中にも「へー」って話もあったし「実はそうだったのか!」(←単に何も知らないお馬鹿なだけぽいが)話が好きっぽいです自分。

投稿: ハピたま | 2007年4月 3日 (火) 10時46分

ああいや、あんなことになって離れてしまったものの、この手の話はなかたさんの方がずっと詳しいし、恐らく今回の文面を見ても付き合いあればツッコミ入った筈。私より詳しい人はいっぱいいるよ。

MiG-21は意外や優れたドッグファイターで、ベトナムでF-4を片っ端から落としたんだけど、これには理由がちゃんとある。アメリカはミサイルの性能が万能であると信じてF-4など一時期の戦闘機や先頭攻撃機を「ミサイルキャリア」的用途で開発したんだけど、これが対空戦術的に間違いで。
機敏なMiG-21をロックオンできずチェックシックスからガンキルという、「ハイテクを使ってる筈の自分らが原始的な空戦で手も脚も出ない」という屈辱をアメリカは味わったわけ。F-15の当時としては過剰なまでの運動性はこの反省だし、F-16は西側のマルチロール機の初代という扱いになってるけど、実のところコンセプトはMiG-21のそれに酷似してる。東の機体が弱い、って思われてるのは情報操作側面が結構あるね。まあ、本当にダメなのも結構あるけども;
このへんは複雑で、ソビエト機安かったので出回ったけど、戦闘機の維持費の多くを占める要素に実は「人材育成費」があって、ようするに安物を買って事後投資をケチるとその安物がお買い得品でも真価を発揮してくれないわけ。第三国とかで使われてボコられてる東の機体は概ねそんな感じ。米国(日本も)は人材育成にお金かけてるからねー。

フライトシムで使ってみると、MiG-21は軽快で気持ちいいんだよね。F-4は鈍重。アメリカ機も、F-86やF-104あたりは軽快だったんだけど。F-104の「まるでミサイルに乗ってるような」揚力で迎え角つけながらかっ飛んで行く感じは楽しいよ。

ラプターの顛末については後述。

投稿: ぬまにゃん | 2007年4月 3日 (火) 11時57分

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