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2007年2月 5日 (月)

地方自治に左右の区別なし、モード

 あるのは民意ただ一つ。

関連リンク:中里氏が再選 陸前高田市長選(岩手日報)

 中里さんはこれでニ期目を迎えることになるが、この方は全国の首長職の中では変わったポジションにある方の一人である。ネトウヨ衆中心に理由もなく(自らの持論においてその根拠を説明できない連中には理由は存在しないものとする)批判の矢面にある共産党に現役で籍を置く。全国で共産党所属の市長は、記憶が確かなら四人しか存在しない。

 中里さんはかの党の党員らしく有言実行の人である。公用車に高級車なんざイラネと言い、自家用で使っている軽トラで通勤している。役立たずになった公用車は売却し、市の収支として計上した筈である。他、無駄遣いと批判が高かった(実際同県の宮古市において大失敗し多大なる損失を計上した)タラソテラピー施設の建設を阻止した。陸前高田市は有権者ニ万人そこそこの小さな市であり、無駄な公共施設が一つ立つだけで多大な損害となるのは明白だった。功績は大きい。

 今回は「面白い選挙」であった。選挙の専門家である父の言うところであるが、純粋な政策支持と単なる神輿担ぎの一騎打ちだったのだ。対立候補の吉田氏は主に民主党から厚い支持を受け、わざわざ県議のポズトを外して選挙に臨んだが、戦略は結局「相手は四年で何をやったか、あんたらは経済的に潤ったのか」と中里さんをこきおろしつつ、そうそうたる顔ぶれの偉いさんにちやほやされるという「典型的な日本古来の選挙のスタイル」を貫いた。市議の中でも吉田氏支持派14人、中里さん支持派は7人と、勢力で見ればまるで勝ち目のない選挙だった。住人の民度が普通であれば。しかし陸前高田市は違った。今回岩手日報ではトピックとして「自共共闘」という言葉を使ったが、正確には違う。あくまで今回中里さんを勝利に導いたのは、市民団体の力によるところが大きい。そして、今回市議の中にあって自民の勢力が二分した。タレント議員を積極的に起用するなどポリシーが弱い人間を駒に使う手口が目立つ自民党だが、それが逆に正常に機能するきっかけとなった。特に党として支持者を決めなかったため、自民系の議員の一部が中里さん支持に回ったのである。純粋に中里さんのスタンスを支持してのことだと思う。共産党は今回は県委員会主体で動いたそうだが、実はそれほど強くプッシュをかけなかったそうだ。市民の民意を信じた、ということらしい。

 陸前高田の皆さんは、何事においても判断が早い。駄目だと思ったことは切る。始めるべきことは「思いたったが吉日」とばかりに即断である。なあなあの状況を好まないタイプの人たちだと私は客観的に見ている。官民両方に言えることである。7300人も「神輿」ないし「経済振興」というにんじんに目を奪われた市民がいたのが正直意外な程だった。(実は、岩手日報の直前の調査で今回の当選は概ね判明していた。7割の市民が中里さんの前任期の業績を「評価する」と答えていたのである)
 お約束手口の「私が当選すれば産業が盛り上がる」という「地方では実際には企業に金を落とし自治を民意から切り離すきっかけになる手法」を、まあ言われるままの活動をしたであろう吉田氏は当然展開していた。しかし陸前高田の市民は騙されなかった。んな簡単に行くなら他所がとっくに黒字だろ、と気づいていたのだ。市民のアンテナがきちんと機能している証拠である。この民度の高さあってこその再選であると私は思う。

 自民会派が割れたのは単にどっちが勝っても負けにならないようにという措置だろう、という意見もあった。それでもよかろう。党に属するというだけで前後左右考えずにただただ反共を謳う上層部よりははるかに賢い立ち回りであるし(注・これは共産党中央委員会への皮肉も含む)、何より民意を的確に把握し、あえて議会内で少数に転じても中里さんについて支持をした、というのは評価できると思う。共闘ではない。あくまで中里さんの所属政党・中里さん自身・主役であった市民団体・そして自民からの応援派は「個別の戦い」を行ったのだ。そこにあったのは民意最優先という旗を死守するという共通の意思だけだろう。地方自治体ほど「国会議員の先生の応援」の類には弱い。大変な誤解であるが、国会議員は偉くもなんともない。大口叩いてる奴は身の程知らずの大馬鹿だ。それに権威があると信じている人間も然りである。規模によってはそのとおり機能してくれないので現状国政はあの有様だが、しかしどんな状況下にあっても選挙において主役は有権者であり、その選挙に関係ない他行政区の議員など実のところ他山の石である。増して政治に関係のないタレントの応援に頼ったりそれを真に受けるなど愚の骨頂である。選挙において真に問われるべきは候補者の人間性が第一、そして第二に政策である。愛される人間であれば多少政策に間違いがあってもそれはきちんと正された上で嫌われるまでは行かない。求心力がなければどんな政策も牽引は不可能である。首長だけ空威張りしても議会が動かなければどうにもならない。そして首長を選ぶのも、議員を選ぶのも、有権者だ。有権者の一票がなければ何一つ始まらない。政策評価をきちんとした上で選挙が行われた自治体は、小規模でも急速に冷えることはまずない。岩手は過疎化が進む地区が多く、その傾向が出やすい土地なので、その場所における選挙を見てきた目で見ると「真面目に候補を選ばなかったツケに苦しんでいる自治体」「真面目に候補を選んでやることをきちんとやった自治体」の差は明暗くっきりと出ている。貧乏に違いはなくとも、住人が政治の話をするときの言葉と、なにより表情が違う。遡れば人としての誇りにまで辿り着くであろう理念だと思うが、安直な「改善」という言葉に踊らず、早急にすべきことから順序をこなす意識が有権者にもあると、自然と候補者にもそれは反映されるし、選挙結果にも出る。そういうものだ。その自治体の動きは政治家にのみ責任があるかのように取る向きもあるが、実は人の言うところの「たかが一票」によって行く末は構築されている。全国の全自治体、すべからくである。

 陸前高田は風光明媚な観光地として知られる反面、津波災害の危険が大きい地域として名高い。これから先大きな災害に見舞われないことを祈っている。そして、今後も市民の民意がプラスに働くよう、常に議論をこれからも住民レベルで重ねていってほしい。お手本であることを誇っていいと私は思う。金に釣られてグダグダになった自治体が多数ある中で、偏見を捨て未来を重視した判断は、ひときわ輝くであろうから。陸前高田市の皆さんの今後の繁栄と安息を強く願う。

 

 さて、そこまで熱く他地区の選挙の話をする必要が?という疑問があるかもしれない。実は全く持って個人的な事情だ。中里さんが初回当選した時の選対部長がうちの父だったのだ。もちろん今回も首を突っ込む気まんまんだったのだが、昨年後半から体調を崩し、母に説得されて今回は傍観者となった。しかしやはり自らもその勝利にかつて貢献した地区であり、中里さんとも個人的に面識があるせいか(会えばあちらから声をかけられるそうだ。父の方が年長なのでさもあらん)しきりに結果を気にしていた。父は某党の選挙オーガナイザーとして全国を飛び回り重点地域応援の切り札として活躍した人物だが、某党の給料は(一部ネトウヨが「新聞の収入で大儲けしてんだろ」と心無い中傷を繰り返しているが)サラリーマンのおそらく1/5以下という超薄給であり、うちの収入は主に地方公務員である母頼みだった。自分で立候補し議員になれば議員報酬は個人のものであるから、うちの家計も多少潤ったかもしれない。しかし父はそれをしなかった。20代の頃現在の居住地で議会に立候補して落選した折、母に「絶対立候補はするな」と言われ、それを父は真摯に守り続けた。結果として父は財を成すことはなかったが、とてつもなく巨大な人脈を得た。各地から今でも感謝の言葉とともに届けられる季節の贈り物は多く、うちは貧乏なのでそれらにお返しが出来ず申し訳ないほどである。

 なんのことはない、父としては選挙や地方自治活動が大好きなだけなのだが(笑)、私ではあれだけの人々に感謝をされるのは無理だろう。家での自己中な姿に口をきかない時期も長かったし、今でも時に衝突するが、私にとっては越えられない壁であり、かつ尊敬できる家族なのだ。中里さんの勝利を喜ぶ父の姿が見られて安心した。私と同じく心臓がよくないので、ストレスを溜めてほしくなかった。ごく個人的にはそれだけのことなのだが、陸前高田の皆さんが誇れる県民であることに違いはないともまた思う。父の件とは関係なく。

 父を見てきただけに昨今の後進の頼りなさには毎度新聞を読む度に嘆くところだが(党方針に従うだけなら人形だ、そんな候補はいらない)、私自身はあまり信じてもらえないかも知れないがノンポリだ。自分の信じる民意でのみ動き、同調できる候補がいなければ白票を投じにわざわざ投票所に出向く。文句があるなら自分で立ちゃいいのだが(父同様母には止められているが、私は気位が高いので決めたらまずその方向に進む)そのつもりは全くない。もちろん体のこともあるが、それ以前に私は父と違って怠け者なのだ。とても行政に携わるなど無理である(笑)。まあ、「大口叩いといて自分それかい!」というのがこの話のオチといったところだ。

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